習慣

『習慣超大全』要約まとめ|大いなる小さな習慣と行動のからくり

[PR]当サイトはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています。

原因は「あなた」ではなく「やり方」

あなたはこれまでずっと、あやふやな俗説や誤解、善意であっても非科学的な助言に惑わされ、失敗してきたかもしれない。自分を変えようとしたのに結果につながらなかった経験があると、変わるのは難しいとか、 自分にはやる気が足りないと思い込むようになる。しかし、それはどちらもまちがいだ。問題はあなたではなく、アプローチにある。

こう考えてみよう。イスを組み立てようとしても、説明書にまちがいがあって、しかも部品が欠けていたら、苛立ちが募るばかりで完成するはずがない。だが、そのときはきっと、自分を責めたりはせず、メーカーを責めるのではないだろうか。ところが、行動の変化に失敗したときは、アプローチ法の設計者を責めることはない。あなたは自分自身を責める。

(中略)

まちがっているのは変化に向けた「アプローチ」だ。問題は「設計」の欠陥であって、「人格」の欠陥ではないのだ。

 

その行動はなぜ起きたのか?

2010年のある日、私はジムで汗を流しながら(ジャネット・ジャクソンの曲に合わせてマシンのペダルを踏みながら)、心拍数が120を超える状態で、人の役に立つ、いつにない行動を取った。赤十字に寄付をしたのだ。それは寄付を呼びかけるテキストメッセージに反応して取った行動だった。このときの私の行動を分解してみよう。

【行動】テキストメールに反応して赤十字に寄付をした。
・モチベーション:地震の犠牲者を支援したかった。
・能力:テキストメールに応答するのは私にとって簡単だった。
・きっかけ:赤十字からのテキストメールに刺激された。

この例では、3つの要素がそろい、私は寄付という行動を取った。もし3つの要素のうち1つでも不十分だったら、そうしなかった可能性が高い。この行動に対する私の「モチベーション」は高かった。 地震の影響は詳しく報じられ、ひどく胸が痛んでいたからだ。「能力」についてはどうか?仮に赤十字が「テキストメール」ではなく、「電話」を かけてきてクレジットカードの番号を教えてくれと依頼していたとしたら? 私はジムで運動中で財布は車に置きっぱなしにしていたので、行動するのはかなり難しかった。「きっかけ」は?寄付を募る相手がそもそもスマートフォンという手段を使っていなかったら? 彼らが郵便で寄付を募り、私がいつものダイレクトメールだと思ってゴミ箱に放り込んでいたら? 私は中身を読むことさえなかっただろう。きっかけがなければ、行動は生まれない。

幸いにも、赤十字は私の願いをかなえてくれた。私にはもともと寄付したいという気持ちがあり、彼らがそれを簡単に実現できる方法を示してくれたのだ。

 

モチベーションはあてにならない

困ったことに、大半の人が、モチベーションこそ行動変化の真の原動力だと誤解している。「報酬」や「インセンティブ」といった言葉があまりにも頻繁に使われるため、適切なニンジンさえあればどんな習慣でも身につけられると誰もが信じている。そんなふうに考えるのは無理もないが、明らかなまちがいだ。モチベーションは、行動をうながす3つの要素の1つであることは確かだ。しかし、モチベーションは気まぐれで、すぐに変化してしまう。本章では、このことから生じる問題について掘り下げていく。

モチベーションはまるでパーティ好きの友だちのようだ――一緒に遊ぶのは楽しいが、空港への迎えを頼めるような相手ではない。その役割と限界を理解したうえで、すぐに気の変わる友をあてにしない行動を選ばなくてはいけない。

 

「行動」とは何か?

私は行動デザインのブートキャンプやワークショップで指導するとき、参加者に対して早い段階で、生活に取り入れたいと思っている新たな「行動」はないかと尋ねる。すると、こんな答えが返ってくる。

・スクリーンを見ている時間を減らしたい。
・もっとよく眠りたい!
・体脂肪を12パーセント減らしたい。
・息子にもっとおおらかに接したい。
・もっと生産的になりたい。

私はこう応じる。「素晴らしい。ではその望みを現実のものにする方法を教えましょう。ただし、みなさんが挙げたのは「行動』ではありません。どれもあなたの 『願望』や、あなたが手に入れたいと願う「結果」です」 願望とは、子どもが成績優秀であってほしいといった抽象的な望みを意味する。結果とは、より具体的で、2学期にオールAを取るというようなことだ。行動デザインに取りかかるには、どちらも優れた出発点になる。だが願望も結果も、行動ではない。

行動を、願望や結果と区別する簡単な方法を紹介しよう。行動はいますぐに、またはある特定のタイミングで着手できることを指す。スマートフォンの電源を切る。ニンジンを食べる。教科書を開いて5ページ読む。これらはあるタイミングで実際に着手できる行動である。これに対して願望や結果はそうはいかない。急によく眠れるようにはならないし、今日の夕食時に体重を5キロ落とすことはできない。願望と結果は、適切な具体的行動に着手し、時間をかけて初めて獲得できるものだ。

 

大胆な行動の落とし穴

大胆な行動そのものは悪くない。人生と幸福にはときに大胆さも必要だ。だが、成功者の物語がメディアで印象深く伝えられるのは、それが「例外的」だからだということを忘れてはならない。大胆な行動は、ドラマになるのだ。他方、持続的な成功へとつながるゆるやかな進歩は見向きもされない。私がトイレのあとに腕立て伏せを2回する場面が取材されないのはそんな理由からだ(まあ、それだけが理由じゃないだろうが)。つまり、大きく大胆な行動は、一般に思われているほど効果的ではないのである。

(中略)

やることはすべて徹底してやろうと考えていると、自己批判と失望が待ち受けている。すでに述べたようにモチベーション・モンキーは私たちを大きな行動へ誘おうとするが、苦しくなると逃げ出してしまう。

 

「きっかけ」の力

私たちは毎日何百というきっかけを受け取っているが、そのほとんどを意識していない。 信号が青になれば、アクセルを踏む。スーパーでチーズの試食を差し出されたら、口に入れる。パソコン画面に新着メールの通知が来たら、クリックしてメールを開く。自然界に存在するきっかけもある腕に雨粒が落ちてきたら傘を開く。自分で設定するきっかけもある煙警報器が鳴ったら、オーブンの扉を開け、忘れていたピザをあわてて取り出す。

きっかけは自然のものでも、人為的なものでも、「すぐにこれをして!」と要求してくる。そしてきわめて重要なことだが、あらゆる行動は、きっかけがなければ起こらない。 ただし、私たちが確実にきっかけに反応するのは、モチベーションと能力がそろっているときだけだ。そのような状態にあれば、タイミングのいいきっかけには即効性がある。

(中略)

人生にはあまりに多くの迷惑なきっかけがあるが、必要なきっかけもたくさんある。ところが多くの人は、一方では無意識にきっかけにうながされて行動しつつ、他方では忘れてしまうのがわかりきっている行動を何とか覚えていようと苦労している。もしあなたが、デスクに付箋をたくさん貼って、スマホからもしょっちゅう通知が来るのに、やるべきことができていないなら、いまこそきっかけを取り戻そう。この章では、あなたの人生に必要なきっかけを取り入れ、望ましくないきっかけを排除する方法を説明する。

 

真珠の習慣

自分にとって苦痛な状況から脱出したいなら、きっかけをデザインしては必要に応じて修正していくスキルは非常に有益だ。私にとっては、十分な睡眠を取ることが長年の課題だった。睡眠の重要性はわかっていながら、睡眠不足が深刻な悩みの種になっていた。寝室内の音が気になって真夜中に目が覚めるのが原因のひとつだった。エアコンの送風機能のオンとオフが切り替わるたびに、カチッと音がするのだ。私は性能のいいエアコンに取り替えようと思っていたが、もっと手っ取り早くて簡単な解決策があった。

ある晩、目が覚めて、またカチッと音がすると身構えていたとき、この音を「顔と首をリラックスさせる」ためのアンカーにしようとひらめいたのだ。そこで「カチッという音を聞いたら、顔と首をリラックスさせる」というレシピができた。 これはすぐに習慣になった。いまではカチッという音を聞くとリラックスする。このノイズが聞こえるとむしろ幸せな気分に包まれるようになった。よく眠れるようにリラックスしなさいと忠告してくれているのだから。私はこれを「真珠の習慣」と呼んでいる。最初は苛立たしかったきっかけが、やがて美しいものに変化したのだ。

 

「自分をほめる」ことの意味

研究の中でわかったことだが、大人は何かにつけて「あのときの自分はダメだった」と落ち込むが、「よくやった」と自分をほめることはほとんどない。私たちは自分の成功を認め、行動に満足することがめったにないのだ。ちょっとした成果について喜ぶのは大げさに思えるかもしれない。日々の生活に追われ、何年も重い足取りで過ごしていると、自分の欠点ばかりが気になってしまうものだ。だが、そう感じているのはあなただけではない。私がこの章を書いているのはそれを知ってもらいたいからだ。私がこれから伝えるのは、とてつもなく大きな力を手に入れ、厳しい状況にあってもいい気分になれる方法だ。この力を使えば習慣を変えることも、最終的には人生を変えることもできる。