自分が思い描いた行動を実行に移すのって、意外と難しいと感じたことはありませんか?
やる気はあるのに、どうしても続かなかったり、なかなか始められなかったり……。そんな経験、一度はあるのではないでしょうか。
ということで今回は、行動を自分の思い通りに操るための行動の土台法則「B=MAP」モデルについて解説し、続いてB=MAPを用いて、継続が難しい行動を継続しやすい行動に実際にデザインしていきます。
この記事を読むことで、自分を思い通りに操るための行動の仕組みを理解でき、それを活用して行動を簡単に実行できるものにデザインする具体的方法が分かります。
自分を思い通りに操って、腰が重いこともスムーズに行動できる、そんな仕組みが気になる方はぜひ最後までお読みください!
それでは、いってみましょう。
行動の土台法則「B=MAP」とは
「B=MAP」は、スタンフォード大学行動デザイン研究所創設者のJ Fogg氏が提唱した人間の行動原理モデルです。この理論は、人間のあらゆる行動(B=Behavior)を3つの要素で説明できることを示した法則です。
- M (Motivation):モチベーション
- A (Ability):能力
- P (Prompt):きっかけ
M:モチベーション(Motivation)
モチベーションは、体調・意義・必要性・期待・報酬など様々な要因によって波のように変化します。自分が意義や必要性を感じることならモチベーションは高まりますが、体調が悪かったり、その他些細な要因で「やっぱ明日にしよ」と、いきなりやる気がなくなったりします。そのため基本的にモチベーションは不安定なものです。3つの要素のうち最もデザインが難しいものになっています。
A:能力(Ability)
能力とはつまり、その行動の難易度であり、自分にとって簡単かどうか、ということです。行動が簡単であればあるほど、実行するハードルは低くなり、実行しやすくなります。逆に今の自分には負荷が大きかったり、手順が複雑な行動は実行するハードルが高く、サボる確率が大きくなります。
P:きっかけ(Prompt)
きっかけは、行動を起こすためのトリガーです。きっかけがなければ、モチベーションや能力が揃っていても行動にはつながりません。きっかけがあって自分が取るべき行動に意識を向けることで初めて実際に行動に移ることができるのです。
自分が普段無意識にやっていることでも実はきっかけがあります。例えばトイレに行くのは尿意を催したとき、ご飯を食べるのはお腹が空いたとき、このように実は身体が私たちの取るべき行動に対してきっかけを作ってくれているのです。このように自分の取りたい行動を取るために、きっかけは重要な役割を果たしています。
行動の成功/失敗を見抜く「MAP図」
人が何か「行動(B)」を起こすためには、「モチベーション(M)」と「能力(A)」、そして「きっかけ(P)」の3要素が揃う必要があります。人が自然と行動できている時は、これら3要素が揃っていて、逆に行動できない場合は1つ以上の要素が欠けている状態にあるということです。
下図は、「モチベーション(M)」「能力(A)」そして「きっかけ(P)」、これら3つの関係を表したグラフです。
ここでは「MAP図」と呼ぶことにします。
MAP図の縦軸は「モチベーション(M)」、横軸は「能力(A)」を表しています。
グラフの上に行けば行くほどやる気が高く、下に行けば行くほどやる気が低いということです。同様に、グラフの右に行けば行くほど能力が高く、グラフの左に行けば行くほど能力が低いことを示します。
能力が高いとはつまり、行動の難易度が低いということです。下図のように、グラフの右に行けば行くほど行動の難易度は低く、グラフの左に行けば行くほど行動の難易度が高いと言い換えることもできます。
ここからの説明は、分かりやすさのため、横軸は「難易度」と言い換えて解説します。
このMAP図上の赤線で示したものが「実行ライン」です。
実行ラインを右上に超えた状態で「きっかけ(P)」を受け取ると、行動は実行されます。
例を挙げてみましょう。
最近お腹の脂肪が気になってきて、痩せるためにランニングしようと思い立ったとします。走る距離は5km。早速始めようという状況です。
この場合、MAP図は以下のようになります。
普段から運動する習慣がない方がいきなり5kmも走るのは難易度が高いです。MAP図上の点は左に寄ります。一方、ランニングを思い立った初日なので、やる気の方は高く、実行ラインを右上に超えられています。
実行のきっかけは思い立ったその瞬間です。実行ラインを右上に超えた状態できっかけを受け取りました。初日は難しいながらもなんとか実行できるかもしれません。
しかし翌日はそう上手くいかないものです。初日と比べてやる気が下がってることが多いでしょう。
その原因は、「実際走ってみて5kmが辛いことがわかった、筋肉痛で動けない、あんなに頑張ったのに目に見える変化がない」などなど、様々考えられます。
MAP図で表すと以下のように変化します。
様々な要因からやる気が下がり、MAP図中の点は下に落ちます。結果、点は実行ラインの左下に潜ってしまいました。
これが、初日のスタートダッシュは続かない、いわゆる「三日坊主」のメカニズムです。
このように、B=MAP法則およびMAP図は、私たちが行動できるか否かを直感的に判断することをサポートしてくれます。
MAP図は、3要素(モチベーション、能力、きっかけ)を調整することで、今まで腰が重かった行動を実行しやすくできます。そして同時に行動を続けやすくできます。つまり実行可能な習慣を自分の手でデザインできるということです。
習慣をデザインするためには、MAP図をデザインすることが鍵となります。
MAPデザイン実例(ランニング)
ここからは先ほどと同じく、ランニングを身につけたい習慣の実例として、MAPを用いた行動デザインをご紹介します。
初期状況
思い立った初日はモチベーション高いということでした。なので難易度が高いことでもこなせるかもしれません。
ただ2日目、3日目と、モチベーションは急激に下がっていきます。その結果、三日坊主になってしまうということでした。MAP図は以下の通り。
これでは痩せるという目的のためのランニングも継続できません。そこでMAP図を使って行動をデザインします。
MAPデザイン
MAPデザインは、3つの要素を以下の順番で調整していきます。
- 難易度
- きっかけ
- モチベーション
難易度調整
まずは難易度の調整。
行動を実行しやすくする方法の一つは、行動を簡単なものに置き換えることです。続かない行動を、失敗のしようがないくらい簡単な行動に替えてください。
これでMAP図の点を右にシフトすることを目指します。
ランニング5kmは運動初心者にはキツすぎます。ランニング初心者の方の走るペースは1km8分ほどがちょうど良いとされています。となると5kmで40分も走ることになります。運動強度的にも時間的にもキツいです。
ということで行動を失敗しようがないくらい簡単にしましょう。
具体的には以下の通り。
- ランニングは1分だけ
- ペースは走りながら喋れるくらい
このくらい難易度を下げて問題ないです。「1分で痩せられるわけないじゃないか」と思われるかもしれませんが、問題ないです。
自分を変えるために最も必要なものは「継続」です。これは痩せるという目的でも変わりません。
B=MAP行動デザインは、継続できる行動をデザインするためのモデルです。新しく始めることは、まず「継続できる」ことを最優先にデザインしましょう。ランニング時間やペースは、ランニング自体に慣れてから伸ばせばよいのです。s
この他にも行動の難易度を下げる方法はいくつかあります。
これらの方法で、MAP図の点を右にシフトさせ、実行ライン突破に近づけることができます。
きっかけ調整
続いて、きっかけ調整です。
行動が実行されるには、モチベーションと難易度の実行ラインを右上に超えた状態できっかけが必要でした。
きっかけを作る手順は以下の通り。
- ランニングに出かける時間を決める
- 出かける時間にアラームセット(スマホ、スマートウォッチ、置き時計など)
- アラームに気づいたらランニング準備
幸い、今はきっかけを簡単に作れるツールがたくさんあるので、自分が一番身近に置いているものを使ってきっかけを作りましょう。
ここまでの調整でランニングを実行できるなら、モチベーションの調整はスキップしてOKです。
モチベーション調整
最後にモチベーションの調整です。モチベーションの調整が一番最後なのは、先にお伝えしたようにモチベーションの調整が一番難しいからです。
モチベーションは初日をピークに下がっていきます。さらにモチベーションは自分の体調や周りの環境によって波のように大きく変化します。
つまりモチベーションは、少なからずコントロールできない部分があるということです。モチベーションに頼った習慣づくりはコントロールできない部分があることを知っておいてください。
それでも、モチベーションを高める方法はいくつかあります。
これらを駆使して、MAP図の点を上にシフトさせ、実行ライン突破を狙います。
MAP調整後の効果
MAPデザインによって、安定して行動を続けられるようになると、次のような好循環が生まれてきます。
MAPの3要素は全て、継続するうちに成長していきます。つまり続けられさえすれば、MAP図上の点は自然と右上にシフトしていくのです。
これが、MAPデザインは「継続する」ことを最優先にデザインすべき理由です。
また、続けるうちに実行ラインを超えてライン上から遠ざかった後、行動の難易度を高めることができます。
実行ラインを下回らない程度に難易度を高めても行動を継続することも可能です。
こうして徐々に強度を高め、成長しつつ継続できる行動をデザインできるのは、MAP図の直感的な行動の見える化によるところが大きいでしょう。
まとめ
今回は、自分を思い通りに操るための行動の土台法則「B=MAP」モデルについて解説し、B=MAPを使って行動を実行しやすいものにデザインする実例をご紹介しました。
今まで腰が重かった行動は、B=MAPモデルを用いて実行しやすいようにデザインし直すことで、根性に頼らず取り組みやすくできます。
取り組みやすいことは同時に継続しやすいということなので、自分を思い通りに操って、健康目標や成長目標など、自分の望む未来に向かって着実に前進することができるでしょう。
そしてB=MAPモデルはいわば、良い未来への前進において、土台となる考え方です。
B=MAPの考え方を取り入れて、自分の行動を操り、望む未来に向かって確実に進んでいきましょう。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。